株式会社 中北製作所

事例紹介

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生体運搬船
ミスト噴霧システム
家畜たちに快適な船旅を。
海上輸送環境の改善に大きく貢献。

OUTLINE

課題
  • 宮古島・石垣島~那覇~鹿児島を航行する輸送船(積荷は生体牛)の環境改善。
  • 生体牛を上甲板(アッパーデッキ)に積載していたため、夏場の暑さや直射日光、風雨に晒されるなど、輸送環境が悪かった。
  • 空気が滞留する場所では、糞尿等の臭いがひどく働く環境が悪かった。
解決策
  • 積載場所を屋内デッキ(Bデッキ)とすることで、直射日光や風雨を遮る。
  • 屋内デッキに大型換気扇を搭載し、悪臭を換気する。
  • 当社の担当は、ミスト噴霧装置を搭載して室内の気温を減温、ミストによる悪臭の吸着も狙った。
成果
  • ミストを噴霧することで、2.7℃の室内減温効果を確認。
  • 運搬後に牛が弱ることもなく、良好な健康状態を維持できた。
  • 船の乗組員の方からは「臭いも含め環境が良くなった」との言葉をいただいた。

DETAIL

背景

牛を元気なまま運びたい、乗組員の働く環境を改善したい。

世界的に有名な神戸牛の多くは、繁殖に適した宮古島・石垣島や沖縄で生まれ、子牛の時に関西に運ばれて育てられます。航路は、宮古島・石垣島~那覇~鹿児島で、およそ2泊3日の航海です。
子牛は、専用のコンテナ(側面が柵の構造)や馬運車のようなトラックに乗せ、RORO船※の上甲板にそのまま積載し運搬していました。そのため子牛たちは、夏場の暑さや直射日光、風雨に晒されるため、衰弱して健康が損なわれることがありました。
また、運搬効率を上げるために、積荷同士は狭い間隔で積載されていました。そのため、積荷の中央部の風通しが悪くなり、熱や臭いもこもりやすく、牛の世話をする人や乗組員の働く環境が悪いという問題がありました。

※商用車や貨物を積載した大型トラック並びトレーラーを輸送する船

解決策の提案

最適な滴径と直進性を兼ね備えた「ミスト噴霧ノズル」を開発。

RORO船の屋内デッキ(Bデッキ)を改造し、生体運搬船とする計画が立案されました。屋内デッキの気温冷却にミスト噴霧が採用され、造船所から当社に「屋内デッキに搭載するミスト噴霧装置を開発して欲しい」という相談を受けました。
ミスト噴霧装置とは、ミストが蒸発する際の気化熱を利用して気温を下げる減温装置です。しかし、「液滴径が大きすぎると、牛に付着し牛の体力を奪う。液滴径が小さすぎると換気扇の気流に流され、屋内デッキの気温が下がらない」という難問がありました。研究開発チームは、「ノズルの径と長さの関係」「ノズルの加工方法」「流体を旋回させる構造」などの試行錯誤を重ね、最適な液滴径と遠くまで飛ばせる直進性を兼ね備えたミスト噴霧ノズルを開発し、これらの難問を解決しました。

成果

室内の減温と減臭に成功。牛の健康を保ち、働く環境も改善。

ミスト噴霧システムの導入により、室内の減温と減臭に成功。室内数十か所の温度測定の結果では、ミストを噴霧することで、室内温度を2.7℃下げる効果を確認。運搬後に牛が弱ることもなく、良好な健康状態を維持することができました。また、クーラーの設置と比較して、貴重な船舶電力の省エネ化も実現しました。
室内の臭い低減においては、大型換気扇による換気とミストの臭い吸着、減温による悪臭の抑制など、いくつかの要因によって、船の乗組員の方からの「臭いが減った」という環境改善の声をいただきました。

今後の展望

流体制御のトータルコーディネートメーカー

当社では建造する船に対して、それぞれ仕様の異なる製品をお引き合い頂いた段階から、開発・設計・製造する完全オーダーメイド生産を行なっています。当社の新製品開発は、長年の経験と実績を活かした技術力と生産力の相乗効果が大きな強みです。
さらに、高度な流体解析技術を駆使し、試作段階で形状の最適化を行い、後戻り検討を少なくすることで、新規開発品でも短納期で製品化を可能とします。今回の生体運搬船「ミスト噴霧システム」の開発では、当時の10月にご依頼いただき、翌年8月の製品化に間に合わせることができました。
当社は、流体を制御する機械と、その機械を自動制御する装置を一貫して製造していることから、“流体制御のトータルコーディネート”メーカーとしてお客様のあらゆるニーズにフレキシブルにお応えいたします。

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